19世紀ギターの修復2

今回修復に出したギター。
作業内容を大きくまとめると指板を全て剥がし新しいものにするというものです。
写真を見てもらうとわかると思うのですが、12フレットを境に右側は指板が古く、左側は割と新しいのです。

これはどういうことか。
おそらく、一度何らかの理由で12フレットのところで切断されネックそのものが取り替えられたということでしょう。つまり現在指板はネックに乗っている部分と表面板に乗っている部分の2枚に分かれています。その影響でネックの強度が落ち経年により角度がきつくなってしまったと思われます。

製作家の奥清秀さんとは数時間にわたって修復の内容を話し合い、数ある選択肢の中から最善の方法を選んでいただきました。オリジナルの要素をしっかりと残しつつ、しかしながら演奏家のヘビーユーズにも耐えられるように。

ちなみに表面板の状態はとても良く、深いタッチで弦を掬うと古楽器とは思えないほどのパワーで鳴ってくれます。

帰りが楽しみです。

19世紀ギターの修理

19世紀ギターなるものがあります。
現在のクラシックギターの祖先ですね。1800~1860年頃を中心に多く製作、演奏されていました。基本的には現在のギターのように弦は6本の単弦。しかしながら胴体は幾分小さく、弦長も今のものより2,3センチ短いのです。後にアントニオ・デ・トーレスによって音量の小ささをカバーするために胴体や弦長の拡大が為されましたが、それまでギターが持っていた古楽器的な音の美しさは減少したという人も少なくありません。

実はウィーンの留学生活を終える直前に蚤の市で当時のオリジナルの19世紀を発見し、その姿と音に一目惚れして日本に連れて帰っておりました。中のラベルは無く、スタイルなどから推測するに1850年頃の楽器ではないかと考えています。かつてのウィーンの有名な製作家ヨハン ゲオルグ シュタウファーや同じくオーストリア同時代のアントン フィッシャーのギターに酷似していますが、おそらく細部を比べると当時その周辺でギターを製作していた別の人のものではないかと思われます。

シューベルトやシューマン、メンデルスゾーン、メルツ、レゴンディやレニャーニの作品を弾くのであればまさに、その時代の楽器です。

いずれにせよ170年ほどの時を経て古の響きを現代に届けてくれる貴重な楽器です。

しかしながら様々な環境を乗り越えてくる中でネックの角度は変わり、ハイポジションを演奏するにはとても苦労します。そのほかの小さな問題も考慮すると指板を張り替える修理が必要と考え、先日稲城市のギター製作家(リュートやバロックギターなどの古楽器も作られています)奥清秀さんの工房におじゃましてきました。現在は古楽器をメインに扱われているそうです。

私が今後活動する上でステージにてこのギターを弾きたい旨を相談すると、快く引き受けてくださりました。
こういった修理は相当な匠の技術と労力、時間が要るので引き受けてくださったことにとても感謝しております。いつもつくづく製作家の技術と集中力、そして美と音へのこだわりは素晴らしいと思っています。リスペクトなしに語ることはできません。

さて、この楽器がさらに美しくなって帰り、みなさまのもとに音楽を届ける日が待ち遠しくて仕方ありません。

どうぞご期待ください!